恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


……つぅか千本フリーバッティングって、そんな事してたら来年甲子園行けるかもな。

DHはないから、代打に抜擢されるかも。

で、ツーランとか打っちゃって大活躍。


そしたら小林は喜ぶかな。

……でも甲子園はそんな甘くねぇな。


「あ、空いてるね」


オレの夢という名の妄想が膨らみきったところで、バッティングセンターについた。

ホームランを打つと10球無料になる事を貼り紙が知らせていた。

さっき頭ん中では打ってきたとこなんだけどな。

どでかいツーランを……

……つぅかさ、なんでツーランなんだよ。

妄想の中くらい満塁ホームランでいいだろ。


なんだかどこまでも煮え切らない自分にため息をつくと、小林が早くもバッグから財布を出して小銭をあさる。


「小林、オレ出すよ」

「ううん。自分の分くらい出すよ。……その代わりこれ持っててもらってもいい?」

「……おぅ」


素直におごられとけばいいのに、小林はそれを断りオレに鞄を渡した。


なんかなぁ……そうゆうトコもオレの気持ちをくすぐるんだよな。


威勢良く腕まくりをした小林がバッターボックスに入る。


「え……左?!」

「うん。右投げ左打ちなんだ~」


なんだ~って……右利きなのに左打ちって結構本格的だな。

小林は軽い口調と、細い身体に似合わない完璧なフォームでバットを構え……


その後小林は見事なバッティングを披露した。

10球中6球を外野に飛ばした小林。


……ぶっちゃけすげぇ。


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