恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
「だから言ったじゃん。小学生から大人までみんなに人気……」
「ほい。やるよ」
「え……」
赤林檎うさぎを小林の手のひらにぽとりと落とすと、小林が驚いた表情を見せた。
「で、こっちの黒いのがオレの。
……初デート記念」
言った後で恥ずかしさがこみ上げてきた。
なんだ、初デート記念って。
さむい……さむすぎる。
だけど、表情を凍らせたオレに、小林はそれが溶けるほど満開な笑顔をくれた。
「友達記念だね。おそろいとかって嬉しいな」
オレの言う意味と小林の理解した意味は違うけど……だけど嬉しかった。
オレのこんな些細なプレゼントを喜んで受け取ってくれた小林が可愛くて、抱き締めたい衝動に駆られる。
けど……出来ない代わりにオレは手の中の林檎うさぎを握り締める。
なんて事のない景品。
人気の林檎うさぎ。
だけど、オレにとってはかけがえのないキーホルダー。
一向に届きそうもないオレの気持ちを、慰めてくれている気がした。
この林檎うさぎが、オレと小林を、繋ぎ止めてくれている気がした。
……かなり毒々しいけど。
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