恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
だけど表情を歪めたオレが見つめる先で、小林の色を無くした瞳がオレに向けられた時――――……
オレの身体が動いた。
脱力している小林の腕を引き寄せて、そのまま抱き締める。
小林の細い身体が、オレの腕の中にすっぽりと収まった。
小林の髪の香りが、オレの鼓動を急かす。
ドクドクと煩い胸に押しつけるように小林を抱き締めると、小林の小さな声が耳に届いた。
「……澤田くん?」
驚きを隠せない声に少し黙った後、オレは小林を抱き締める腕に力を込める。
「泣けよ」
「……なんで? 先生は怪我した馬場先生を送るだけだよ」
「いいから。……泣け」
高遠が馬場を送るのは、別に特別な事じゃない。
怪我人相手なら当たり前の事。
だけど……その前にする事があるだろ。
馬場よりも大事な存在の小林を不安にさせるなよ。
もっともっと、大事にされてるって小林に実感させてやれよ。
安心させれやれよ。
好きな女を不安にするしかできないなら、男なんかやめちまえ。
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