恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
chapter Ⅲ
手作りの重さ
「これ可愛いだろ」
オレが指先にぶら下げる林檎うさぎに、矢野センが眉を潜める。
「林檎?……うさぎか?」
「林檎うさぎっていう人気キャラクター。
知らないなんて矢野センも歳だね」
「んなもんに興味持つなんてまだまだガキだな」
イヤミを返されて苦笑いを浮かべていると……学習室のドアが音を立てて開いた。
入ってきたのは、この間の3年女子。
……矢野センと仲いいんかな。
「はい。プリント。先生いつもあたしが週番の時ばっかりプリント出すからヤダ……って、あれ?林檎うさぎだ。黒なんてあるんだ」
矢野センに集めたプリントを渡しながら、女子生徒の視線がオレの指先に止まる。
思わず笑顔を向けられて、オレは少し焦りながら答える。
「あー、はい。ゲーセンで取ったんですけど」
「へぇ。あたしも黄緑色の持ってるよ。青林檎うさぎ。
……先生知ってる?これ」
オレと同じように聞く女子生徒に、矢野センは呆れて笑う。
「知らねぇ。オレもうガキじゃねぇし」
「先生もうオジサンだもんね。そっかぁ、知らないんだ」
「誰がオジサンだよ。オレまだ25だし。
……体力が有り余ってるとこ後で教えてやるよ」
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