恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


さっきオレと話した時には崩されなかった矢野センの表情が、女子生徒相手に苦笑いを映し出した。

そして最後は挑発するような意地の悪い笑みを作った。


体力って……後で体力測定でもすんのかな。

そんなオレの予想とはちぐはぐに、女子生徒は少し赤くした顔で不機嫌を表した。


「……先生しつこいからやだ」

「しつこくねぇだろっ!おまえがすぐ疲れすぎなんだよ。

……澤田、ちなみにコレ、バスケの話だから」

「あぁ、そうなんだ。バスケならオレも得意……」


オレが答えた途端に開くドア。

今日はやけに来室者が多いな。


だけど、3人の視線を集めた人物に、部屋を異様な空気が包んだ。

オレだけじゃなく、矢野センと女子生徒も微妙に表情をしかめる。


人気ねぇのかな。……音楽の馬場。


そんな空気も気にせずに、つかつかと矢野センに近付く馬場の手には紙袋。

購買のとは違うみたいだけど、香ばしい香りが食欲を誘う。


「昨日は助けてもらっちゃってすみませんでした。

これ、パン焼いたんでよかったら……」


矢野センは、馬場の差し出した紙袋を少し見て……

そして申し訳なさそうに笑った。


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