恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
「大人ってゆうよりオジサンだけどね」
「……市川、本気で覚えとけよ」
「あ、矢野セン。バスケは放課後? 場所は?」
会話に割り込んで聞いたオレに、矢野センが口角をつり上げて笑う。
「第二体育館。かなり本格的だから覚悟しとけよ」
意味深な笑みを浮かべる矢野センを残して学習室を出ると、女子生徒もオレを追うように出てきた。
そして廊下にオレを見つけると、にこっと笑顔を見せた。
「第二体育館、本当に行ったら大変だよ。
今日からバスケ部の強化練習だから本当にしごかれちゃうよ」
くすくすと笑いながらそう言うと、女子生徒はオレに背中を向けて歩き出す。
……矢野センめ。騙しやがったな。
苦笑いを浮かべながらオレも歩き出した時、階段の踊場から話し声が聞こえた。
落ち着いたよく通る声から、それは高遠だって事が分かって……相手は、馬場か?
眉を潜めながら、壁の影から覗くと……
「パンが焼けるなんてすごいですね」
「いえ、簡単なんですよ」
想像通りの2人の姿があった。
高遠の手には馬場のパンが入った紙袋。
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