愛を運ぶケーキ屋さん
大人の登場に驚き、唖然としているいじめっ子達をその場に残して私は店に一旦戻ることにした。
「···私、柳沢 茜(ヤナギザワ アカネ)って言うの」
店に到着し抱き上げていた彼女を下ろした途端、そう言葉を発してきた。
「···良い名前ですね」
優しく呟けば茜ちゃんは照れたように顔を背けては、落ち着きなく視線をさ迷わせている。
その様子が何だか可愛くてこっちまで笑みが零れてしまった。
「今日の、昼間のこと聞かないの?」
おずおず、とまるで怯えた子猫のように私を見上げて茜ちゃんは問い掛けてくる。
私はアイスティーと苺が乗ったタルトを彼女の前に出し、なるべく優しく怖がらせないように笑った。
「茜ちゃんが言いたくなる時まで、私は待ちますよ?」
そう返すと本当に嬉しそうに、彼女は笑ったのだった。