太陽のような君へ
「ここが俺たちのクラスだな!」
光希が満面の笑みで振り返り言った。
教室のクラス表記は二年三組。
彼の後に続いて教室に入り黒板に貼られた座席表を確認する。
俺は窓側の一番後ろの席だった。
もちろん前は日向だった。
「お前一番後ろかよ!いいなー!俺と続いてたら最高な席だったな。」
そう吐き捨てて自分の席に向かう光希。
俺はその後に続いて自分の席に向かった。
すでに日向は自分の席に座り窓の外を眺めていた。
俺が横を通り過ぎても気づかない。
「おーい啓人!今日さ、何時に始業式終わるんだっけ?」
間に日向がいるのも御構い無しに大声で光希が聞いた。
「さぁ、知らない。」
適当に返事をした。
「えー俺この後予定あるんだよー彩芽ちゃんと」
彩芽ちゃん。
光希の彼女候補一番目の女の子だ。
こいつはフラフラして適当なやつだが何故かモテる。
顔が整っているからだろうか分からないが女の子に困ったことはないらしい。
俺が無視をしているのを見かねたのかついに光希は
「ねぇ、河原さん何時に終わるか知らない?」
といきなり日向に話しかけた。
俺は焦った。
光希にはもちろん、他の人たちにも俺たちは他人のふりをしていたからだ。
ここで日向が俺に話をふってきたら厄介だった。
「さぁ、知らない。」
そんな心配をよそに日向は窓から目を話すことなくそう答えた。
「そっか。あ、河原さん!俺烏丸光希!よろしく!」
ついでかのように光希は日向に自己紹介をした。
「河原日向。よろしくね。日向でいいよ。」
さっきまでずっと窓から目を離さなかった日向が顔の向きを光希に向ける。
すると光希は俺に視線を向けてきた。
嫌な予感がした。
「あ、後ろの無駄にイケメンな男は神崎啓人。俺の親友」
そう笑顔で俺を指差す
すると日向はゆっくりと振り向いた。
こっちの気も知らないで呑気なやつだと光希を恨む。
俺は一瞬でここで実は幼馴染だと言うべきなのか頭で整理していた。
しかしその沈黙を破るかのように日向は答えた。
「神崎くん。はじめまして。よろしく。」
日向と目を合わせたのはいつぶりだろう。
そう思いながら他人のふりをする日向に安心したのと同時に寂しさを覚えた。
「あぁ、よろしく。河原さん」
俺も同じように他人のふりをした。