さよなら苺飴




「八年かあ、あっという間だった、八年前のあの日の事が一昨日くらいのことに感じるね」


「ああ、そういえばまだ何も頼んでなかったっけ」


気まずい話になると君は必ず
ああ、
と言う

わざとらしい癖なんだけど
わざとじゃない

八年前から君も何も変わっちゃいない


遅刻のグレーゾーンも、何も一つ
変わっていない


「あ、マスター、コーヒーのホットと紅茶のホット一つずつ」



「よく紅茶のホットが好きだって覚えてたわね」



「この店に来るとお前は季節関係なくいつも紅茶のホットだったよな」



「あなたは夏はコーヒーのアイスで寒い時はホットだったね、気温次第で臨機応変に飲み物を変えていたよね」


「まあそれが普通なんだろうけどな、そうそう、なんでいきなりこんな田舎に戻ってきたんだ?」



「・・・・・・お正月は仕事が忙しくて帰ってこれなかったから、かな」



私は今年結婚する。
その為に恋人と一緒に戻って来たなんて言えない



言っても君は何も言わないだろうけど
君だけには知られたくなかった。








< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop