恋に落ちるなら君がいい
まさか
楓社長の口からあんな言葉が飛び出すなんて思いもしなかった。
動揺が隠せなくて逃げるように自分の部屋へ入ってしまったけれど…。
扉に手をあてて
悲しそうな目をした楓社長の顔を浮かべると
自分の言った言葉が正しかったのか
そうじゃなかったのか…
分からなくなる。
嫌われたかもしれない。
嫌われたならそのほうがよっぽど楽なのに…
薬指の契約の重みがのし掛かるように
嫌われるのが怖い自分がそこには居た。
嫌われたくない理由さえも分からないのに。
「一緒にいたいからだよ」そう言われた時
自分の居場所を見つけたような錯覚を覚えてしまった。
居場所なんて…
どこにもあるはずなんてないのに。
帰る場所はいつだって
思いでのあの場所なのに…。