恋に落ちるなら君がいい
「もしもし…?」
携帯の向こうから聞こえた慧の声に息が詰まりそうになって言葉が出ない。
「…澪?」
言わなくても
伝わった。
「うん。…私だよ?」
「この数日…電話がくるか来ないか…スゲー恐かった。」
静かに
だけど嬉しそうな声を聞いたら
涙がこぼれてくる。
「私も…同じだった。」
「澪、次の土曜日2人で会えるようにするから。
必ず会いに来て…?」
「…どこに?」
慧と交わした約束。
2人で会えるようにする。
そう言われても土曜日、楓社長が外出しなかったら
外に出かけるのは気まずい。
そう…。
私と楓社長はあの夜以来、気まずい雰囲気で同じ屋根の下にいても
できるだけ顔を合わせないようにしていた。
それは
私が一方的にそうしていただけかもしれないけれど…。