恋に落ちるなら君がいい
久しぶりに強い酒を呑んだせいで頭がズキズキ痛む。
澪はもう帰宅しているだろうか…。
腕時計を確認すると、既に午前2時を過ぎているのに…
もしまだ、彼女が帰っていないかと考えると
帰るのが恐くなる。
友人と食事に行くと言っていたが…。
本当のところはどうなのかさえ分からない。
その言葉を素直に信じてやれないのは。
好きだという想いがこちらからの一方通行だからだ。
父は…俺が幼い頃に亡くなってしまった母の代わりに男手一つで俺を育ててくれた。
しが無い会社員の父が独立して今のあの会社を成長させるまでに
人知れない苦労をしてきたのを俺は間近で見てきた。
だからこそ俺は父のために…
あの会社を潰すわけにいかないと…
一人の世界でただずっと
自分のやるべきことだけをやってきた。
幼い頃からずっと
友人の関わりもなく
ただひたすら
父の背中を見て生きてきた。