恋に落ちるなら君がいい
人の愛し方を知るために
トラウマを…乗り越えるために。
彼女と出会ったんだと…信じたい。
例え彼女の瞳に俺が映っていなくても。
静かに玄関の扉を開けると部屋の中は真っ暗で静まり返っていた。
彼女は…居るだろか。
不安で
胸が苦しくなる。
誰かを好きでいる。ということは…
仕事の何倍も大変だ。
静かに音を立てずに彼女の部屋を覗くと
既に眠っている姿を見つけてホッと安心したのは、つかの間だった。
側に行き
その髪を撫でると
彼女から香った別の匂い。
この香りは…
慧一から香る香水の匂いと同じ。
「慧一と…会っていたのか…?」
眠っている彼女が答えるわけがないのは知っていた。
けれど彼女が答えなくても
答えなんてもう見えている。
どうして…?
こんなにも想っているのに…
「俺じゃダメなんだ…?」