恋に落ちるなら君がいい
涙腺が酒のせいで弱っていた。
感情のままに
涙が頬をつたって落ちると
彼女の頬にあたり
砕けるように散っていく。
「…楓…社長…?」
寝呆けているのか、瞼を少しだけ開けて
右手をそっと差し出し
細い指で俺の頬に残る涙の跡を辿る。
「…泣かないで?」
か細い声。
「俺はどうして…
君を好きになってしまったんだろう。」
「大丈夫。泣かないで…
私が側にいるから」
そう言って優しく微笑むと静かに瞼を閉じる。
やはり寝呆けてたのだろう…。
触れられた頬にかすかに残る彼女の温度。
「忘れていてもいい…
初めて君から触れてくれたね…。」