恋に落ちるなら君がいい
「風邪ですね、脱水症状を引き起こしているから、ちゃんと水分をとらないと熱は下がらないよ」
薬を手渡されておじいゃん医師を見送り、部屋に戻ると楓社長が目を覚ましていた。
「体、大丈夫ですか?お医者様が薬を置いて行って下さいましたよ」
「ああ…なんだそうか俺はてっきり…」
頭痛があるのか体を起こし頭を抱える彼に薬と水を差し出す。
目はほんのり赤くて頬も赤い。蒸気でもでてきてしまいそうだ…。
「脱水症状があるって…」
「迷惑をかけたな。すまない。」
謝る彼はいつものピシッとした姿はなく、まるで捨てられた子犬のように弱々しく見える。
「迷惑なんかじゃないですよ。しおらしい態度なんて、社長らしくないです。」
ベッド脇に腰を下ろした私に彼は聞いた。
「俺らしいって…なんだ?」
「それは…」
そう聞かれて、自分で言った言葉だったけど説明に困る。
社長らしい。
社長らしいって…なんだろう。