恋に落ちるなら君がいい


最初は自己中で

周りなんか気にしてなかった彼。

いつも凛々しくピシッとしていて

そうドラマにでてきそうなほど完成された人だった。

けど、一緒にいるにつれて徐々に彼の優しさを垣間見るようになって…


でも

本当の社長を私は…

知っているというのだろうか。



「…すいません。そんな偉そうな事を言えるほど、私は楓社長の事を知りませんでした。」

微笑み困りながら謝ると

手首を引かれて抱き寄せられる。

触れた体温が

燃えるように熱くて

驚いた。



「高い熱があるんですから…大人しくしていて下さい…。」


体を離すことはできるけれど弱っている社長を

強く

拒む事になんとなく良心が痛む。



「少しだけ…こうしていて。

澪はそう。

俺の事なんかこれっぽっちも知らないだろ…?

だから


知って欲しい。

君にだけ

知っていて欲しい。」



本当に弱っているのかと思うくらいに強く抱きしめられる。


その声が熱のせいで震えているのか分からなかったけれど


弱々しいその声が耳元で聞こえると


拒む事ができなかった。


社長の事を

少しでも

知ってみたい。と…思った。



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