恋に落ちるなら君がいい
熱のせいだろうか…
それとも…
抱きしめても澪が拒まなかっただからだろうか…
心が弱くなる。
弱い自分を澪に知ってもらいたいと…
強く思った。
記憶の扉を手探りで開けて行くと
ぼんやり掠れた思いでの中に
優しい母の姿があった。
「楓くん、早くお熱下がるように、ママがずっとそばにいるからね」
幼稚園に入るまで、記憶にはあまりなかったけれど俺は体が弱くてすぐに熱をだしていたと父が言っていた。
熱のせいで体がだるい時にいつも母はピタリと寄り添っていてくれた。
「ママ、絵本読んで」
「楓くんは絵本が大好きね。将来は絵本作家かしら?」
嬉しそうに笑いながら
何冊も何冊も、そばで絵本を読んでくれた。
母との僅かしかない思いでには
いつも優しいその姿があった。