恋に落ちるなら君がいい


俺の手を優しく握りしめてくれる優しい手。


泣いたらすぐに抱きしめてくれた優しい温もり。


自分のせいなんだが…

おもちゃが壊れた時は肩を抱き寄せ一緒に悲しんでくれた。


悪い事をしたらピシャリと手を叩いて叱って


そしてまた、抱きしめてくれた。




あの頃の俺は

母に触れられるのが大好きで

よく、母や父が「楓は本当に甘えん坊だ」とからかわれていた。



その通り


母が夕飯の支度をしていたって

裁縫をしていたって


俺はいつも母に吸い付くようにピタリとくっついていた。


母の匂いや

温度や

優しい穏やかな声が大好きだったんだ。




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