恋に落ちるなら君がいい
楓社長の抱えていた思いを共有した時
私は
自分の両親を思い出しながら泣いていた。
きつく抱きしめられて
そっと抱きしめ返すと
私は1人。なんじゃないと心から思えた。
喪いたくなくても喪ってしまったもの。
自分の力で取り戻すことのできない大切なもの。
私はそれを自分から断ち切って
1人になった。
楓社長の話しを聞きながら…
家を出て以来初めて…
鮮明に両親の顔が浮かんだ。
私が家を飛び出した時の
泣いてるお母さんと
顔を真っ赤にして怒っているお父さんの顔。
二度と思い出したくなかったあの顔が
今、どんな表情をしているのか…
心がギュッと締め付けられるように痛む。