恋に落ちるなら君がいい
もしも私が…慧一にとって親に決められた相手ではなかったら…
そう…
あなたの奥様のように
普通の家庭に産まれた女だったなら…
私もきっと…
慧一にとって恋愛の対象になれたかもしれない…。
そう考えると
とても惨め。
惨めで情けなくて…
どうしようもないくらい悲しいけれど…
でも私はあなたの奥さんの産まれたような一般家庭の娘じゃなかったから
慧一と結婚することができた。
「…夫婦円満の秘訣だなんて。
私達は普通よ?普通に仲が良いだけ。だって物心がついた時にはもう一緒にいたんですもの。
でも…そんな事を聞くなんて…
もしかして、楓さん夫婦は何かの壁にぶつかってるのかしら…?」
穏やかに
だけど、ほんの少し意地悪な聞き方をすると、彼は困ったように口を閉ざしてしまった。