恋に落ちるなら君がいい
きっと彼は何かに気づいてる。
だからこそ
私を呼び出した。
だけど心配なんかする事は何もない。
あなたが想像する最悪なパターンを
私は決して許さないから。
だって
そうでしょう?
私は
慧一の妻ですもの。
「奥様と少しくらい喧嘩したって平気よ。夫婦はそうやって深まっていくものじゃないかしら?
結婚した者勝ちよ」
アドバイス程度に答えると
彼は少しの間、黙り込んで
私の言った言葉を呟く様に反復した。
「この後、予定があるので今日は申し訳ないけれど、これで失礼させていただきます。
また、誘ってくださいね」
自然と作り方を覚えた最高の笑顔を向け、席を立つと
不意に掴まれた手。
真剣な瞳で私を見上げた彼。
「砂月さんの結婚生活は今のまま幸せですか?」
真っ直ぐな瞳。
素直で純粋な瞳。
その瞳が
慧一と重なる。
「こんな結婚、本当に幸せか…?」
蘇る慧一の言葉が
まるで、今…
再び囁かれたような錯覚を覚えて息を飲んだ。
けれど、すぐに我に返り私は笑った。
「幸せよ。」