恋に落ちるなら君がいい



先週と今日で二度目。


彼女が友人と食事をしてくると言ったのは。


それが真実なのかは分からない。


疑って砂月さんに連絡をとったって

真実が聞けるかは分からない。




それなら


黙って待つだけ?


それも違う。





夜の9時


静かに玄関の扉が開いた。


小さな声でただいま。と言う彼女の声が聞こえて、俺は読んでいた本を閉じた。




「お帰り。食事は楽しかった?」

努めて笑顔で聞くと、彼女は少し困ったように笑う。



分かり易い子だ。



「澪、今度また福富夫婦を食事に誘いたいと思ってるんだが…


どうだろう?」


「えっ⁈あ、いえ…私は別に。あのご夫婦は楓社長のお友達ですし。

楓社長の決めた通りにして下さって構いません。」


少しだけ泳ぐ視線。


「ありがとう。日程が決まったら教えるよ。」


そう言い、抱き寄せると

思った通り

あいつの鼻につく匂いがする。


「ちょっと、着替えて来ます。」

慌てて体を離し逃げるように部屋に行く。


君は気づいてる?

君の一つ一つが俺を傷つけてる事。



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