恋に落ちるなら君がいい


「おかえりなさい」

そう言いながら優しく笑いかけると

「ただいま」って彼もまた少しの間の後に優しく笑った。



「夕飯はあるのかな?」

「…ありますよ。まだいただいてなかったんですか?」

「ん、いや…少し小腹が空いてるんだ。」

アイランドキッチンに向かう途中、彼の横を通りすぎるとふわりと女性の香りがした。


もしかしたら付き合ってる彼女がいるのかもしれない。


冷蔵庫からおかずを取り出して電子レンジで温めている間の数分の沈黙。


声のかけかたが分からなくて彼に背を向けていると


「この部屋には慣れた?」と、彼の方から言葉をくれた。


「…今まで8畳の1ルームでしたから。

この家に帰るたびに別世界に迷い込んでしまった気持ちになるけど。

なんだかお姫様になった気分で過ごさせていただいています。」


少し

素直に可愛いことを言いすぎてしまっただろうか?


お姫様なんて言葉を口にしてから少し恥ずかしくなって


彼の方を振り向けない。



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