恋に落ちるなら君がいい



仕事が終わるとすぐに楓社長の携帯に電話を入れると

久しぶりに聞く彼の声が優しく耳に触れた。



「福富夫婦との食事会の話し…今夜だって聞きました…。」


「ああ、問題あった?」


そうじゃない。

問題はない。


問題はないけど

どうしてそれを伝えてきたのがあなたじゃなくて慧だったのか


聞きたかったけど




聞けなかった。



楓社長の離婚にだした条件は福富夫婦との食事会の後。




それは

今夜だということ。



楓社長は

いつも突然だ。



「俺は今、出先だから。あのレストランで合流しよう。」

「…分かりました。」


彼のこの突然の行動に文句なんか言えない。


言える立場じゃない。



だってずっと…


傷つけてわがままを通していたのは私のほうだから。


だから


終わりの日を彼が決めたとしても…


文句なんか言えるわけがない。


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