恋に落ちるなら君がいい



一度帰宅して着替えて靴を履き、さふり返り部屋の中を振り返る。


今夜


ここは私の家ではなくなる。


もともと私が住むには不釣り合いな家だった。


けど…


ここがもう

私の帰れる場所ではないんだと感じた時



切なさが胸を揺さぶる。




錯覚でも

居場所を感じていた部屋


私がいても良かった部屋


私を受け入れてくれた部屋。


それは部屋だけじゃない。



この場所と

あの人が


セットで私を迎え入れてくれた。



「この部屋には慣れた?」


出会った当初の無機質な彼の笑顔が頭に浮かぶ。



そん彼は…


もう居ない。


違う。


もう

居れないのは

私の方。


音も立てずに流れた涙を拭って


私は待ち合わせの場所へと向かった。



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