恋に落ちるなら君がいい
「水無月夫人ですね。お待ちしていました。」
誰も居ないレストラン。ウェイターさんが私を席へと案内してくれた。
どうやら1番早く到着してしまったみたい…
こんな綺麗で広いレストランに一人ぽっちでいるのは…
慧と過ごしたあの部屋に
一人でいる以上の孤独感を感じる。
綺麗な夜景も
私一人で見るには勿体無さすぎて
目のやり場に困る。
「待たせてすまない。」
少し遅れて楓社長が到着すると
久しぶりに見たその顔を前に
私は笑うこともできなかった。
静かに隣に座る彼。
「福富夫妻は…遅いですね」
そう言った私に「向こうには時間をずらして伝えている」と彼もまた、少し
弱々しい声で答えた。
「この食事会が終わって家に帰ったら…
君は自由だよ。」
「はい…」
と、いうことは
離婚届けも既に用意されてに違いない。
心がざわつく。
切ない予感で
苦しくて…
何が不安なのかも分からない。
ただ
漠然とした不安。