恋に落ちるなら君がいい
彼女の泣き姿が
澪にどう映ったのかは俺には分からなかった。
そもそも
砂月が泣いていることなど俺にはどうでもよかった。
「だから澪、君は幸せになっていい。
後の事はなんの心配も要らないし。
言っただろ?
…別れても君を守るって」
「楓…社長?」
目が合った瞬間
慧一が澪の手を引いて
彼女を連れ去る。
それはまるで恋愛ドラマのように。
無理やり引き裂かれた愛なら…
元の鞘におさまる権利はあるだろ…。
「だけど…
離婚するって言っただけでまだ、離婚はしてないんだけどな。
バカ男…
気が早いんだよっ…」
ため息をつきながら頬杖をつくと
泣いていた砂月が
鬼の形相で俺を睨みつけていた。