恋に落ちるなら君がいい




彼は異様な目で私を見た。



自分から好きな相手を手放したこの人に

私の気持ちなんか分かるはずがない。


私は好きな相手を

手放すことなんかはしない。

愛してるなら…

手放したりしてはいけない。

小鳥だってそうでしょう…?


どんなに愛情を注いだって籠から出してしまえば

向けられた愛情に目もくれずに飛び立ってしまうわ…。


どんなに愛していても…ね。



「あなたは、容姿もスキルもたくさんのものを兼ね備えた人間なのに…

随分と余裕がないものなんだな…?」

また、その皮肉めいた笑顔。



「それなら、あなたは彼女がまたあなたの腕の中に戻ってくる。なんていう甘い考えでそんな余裕があるのかしら?」

それは

間違いよ。


手放した物がもう一度戻ってくることはない。


自由を与えた瞬間に向けられるのは

そう

いつだって

裏切り。だけなんだから。

私はそれを

身を持って学んで来た。

経験があるからこそ…

私はちゃんとそれを学習した。

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