恋に落ちるなら君がいい





彼女が…

澪が俺の前から姿を消して二ヶ月が過ぎようとしていた。



「海外にいる叔母のもとで花嫁修行をしている」という無茶な休暇願いもそろそろヤバイだろ…。


彼女に渡せずにいる離婚届けを俺が持っている以上

家にある彼女の荷物をどうにもできない…。



自宅に帰るたびに

彼女の使っていた部屋に

彼女が戻ってきていないかと

変な期待を込めて


その扉を開けてしまう。


彼女の部屋はあの日のまま…


彼女の残り香だけはそこにあるのに…

彼女はいない。

彼女は帰ってこない。



あの部屋の扉を開けて


彼女の不在を確認するたびに

苦しくなる…


会いたくなる。


触れたいと願ってしまう…。


社長室の窓から君を探すのも日課のようになってしまった。


けれど


この向こうのどこを探したって


彼女を見つける事はできない。


こんなに会いたいと願っているのに…





心が叫ぶということは…

こう言う事を言うのだろうか…。



彼女が幸せならそれでいい…か。


「口にするのは簡単なものだな…」

「悩み事ですか?」

突然、聞こえた秘書の声に驚いて顔をあげる。


「いつからそこにいた…?」


「社長が窓の向こうを哀愁漂わせて眺めていた時からですが…


問題でも?」


「あり過ぎだっ‼用もないなら入って来るな!そして用があるならすぐに声をかけろ‼」


睨みつける俺に動じない。


彼女の心は絶対に鋼でできている。

はずだ…っっ‼

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