恋に落ちるなら君がいい




約束の時間より少し早く


指定された公園の

からくり時計の下に来たものの

そこには誰もいなかった。


「…からかわれたのか…?」


会社でこの俺に…


そんな事ができる度胸のある人間なんて…






「確かにいるな。」


あの鋼の心の持ち主。

俺の秘書‼

何を考えてるのかわからんが

あいつなら

…やれそうだ。


真冬の夜の公園で
「少し頭を冷やせということなのか…」



恐ろしい女だ…。




ため息をつき

その場にしゃがみ込むと

不意に背後から流れるメロディー。



からくり時計が8時丁度を指したのだ。



「確かに綺麗な曲だが…1人で聞くのは虚しいだけだ…」

それを俺に虐げるとは…

本当にクビにしてやりたい。


「1人じゃないですよ?」




しゃがみ込んだ俺の頭上から聞こえた声。



思わず


息を呑んだ。




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