恋に落ちるなら君がいい
私の最初の恋の相手が
慧で良かった。
慧じゃなきゃ嫌だ。
慧じゃなきゃ…
ダメだったんだ。
楓社長の元から逃げたあと
…10日間
私は慧にわがままを言って
実家近くのビジネスホテルに住み込んで
実家に通っていた。
許してもらうためなんかじゃない。
謝るためだけじゃない。
ありがとうを
言いたくて
当たり前だけど
最初の数日間は顔も見せてもらえずに門前払いだった。
「うちに、澪なんて名前の娘はいないっ!」
って
久しぶりに聞いたお父さんの怒鳴り声。
4日目。
鳴らしたインターホンに出たのはお母さんだった。
お父さんが不在だったから…
でもそのおかげで
お母さんと
顔を合わせることができたんだ。
思いきりビンタされるかと思ったら
きつく
抱きしめてくれた。
会いたかったと言ってくれた。
私の頬を撫でて
「生きていてくれて良かった」って
泣きながら
何度も
呪文のように
繰り返した。