恋に落ちるなら君がいい
そう思い
瞼に目一杯力をいれて
重たい瞼をこじ開けると
ぼんやりと見える
無表情な慧の顔。
「まだ…夢から覚めきれてないのかしら…」
独り言を呟くと
コチンと軽く頭を叩かれて
ハッキリ目が覚めた。
「夢…じゃない?」
慌てて体を起こすと
視線が合う高さまでしゃがむ慧一が
ふっと笑った。
「こんなボロボロのすっぴんな砂月、初めて見た。
いや…すっぴん自体が初めて…かな?」
そんな事を言われて
自分がすっぴんだということを思い出し
慌てて両手で顔を隠した。
「私に、別れを告げるために帰ってきたんでしょっ‼
くだらない事を言ってないで早く離婚届けをだしなさいよ‼」
フられる私に
もう
慧一の前で飾る必要も
取り繕う必要もない。
涙が溢れてくる。
今まで
ずっと
あの子と何をしてたのよ…。
想像するだけで
心が粉々に砕け散ってしまいそう…。