恋に落ちるなら君がいい
彼女と籍をいれてから初めて早く帰れたけれど…
玄関に彼女のパンプスがない。
「まだ、帰ってないのか…残業でもしてるのかな?」
まあ、居たら居たで、話のネタもないし。
食事だけでも外で済ませてきて良かった。
そう思った時
背後で玄関の扉が勢いよく開いた。
「あ、もう帰ってらっしゃったんですね」
「ああ、おかえり」そう言って振り返った瞬間
体に稲妻が落ちたようなショックを覚えた。
買い物袋を片手にいつもの優しい笑顔を浮かべた彼女の目がウサギのような赤い、泣き腫らしたような目になっていたんだ。
何かあったのか…?
仕事?
プライベートで?
少し気になったものの、彼女が努めていつも通りを装っているので
聞かれたくないこと。なんだと認識し
気付かないフリをした。
「すいません、これから夕飯作りますね」
そう言い残すと足早に俺の横をすり抜けてキッチンへ向かう。
なんだか
外で食事を済ませてきたとは言いにくい雰囲気なだけに
俺は何も言わずに先にバスルームへと向かった。