恋に落ちるなら君がいい
そして、スーツのまま連れて来られたのは自宅周辺にあるファッション街。
「どのお店にしましょうか?」そう聞かれても名も知らないブランドばかり。
そもそもブランドなのかさえも分からない。
「君に…任せるよ」
そう伝えると、彼女はすぐ先にあったお店の中へと入っていく。
その店には、俺にとっては懐かしい安手のすぐ傷みそうな生地で作られた服がたくさん陳列されている店だった。
「散歩くらいなら、高い服なんて要らないですよ」
そう言い彼女は上下共に彼女のセンスで選んだ服を抱える。
服に靴。一式、買い揃えた俺の散歩着は貧乏時代によく着ていた無名のデニムのGパンに長袖のTシャツ。カーディガンだ。
親子二代で有限会社から今は誰もが知る株式の大手まで会社を成長させた、そをな俺にこんな服を着せる彼女は…
よほど、肝が据わっている人間だと思う。