恋に落ちるなら君がいい



「楓君?…どうかしたかね?」

「えっ?あっ…いえ…」

「それにしても、また結婚なんてめでたい話だな。

亡くなったお父さんもさぞ、天国で喜んでるに違いない。」


「俺もそう…思います。」

「式はいつあげるんだね?」

「今は相手との相談中ですが…その際にはぜき、ご招待させて下さい」

「勿論だよ。親友の息子の晴れ姿だ。

あいつの代わりにシッカリ見納めさせていただくよ」


「…ありがとうございます。」


深々と頭を下げて帰ろうと踵を返した俺を、父の友人にで地主である遠藤が、また呼び止めた。


「そうだ…

新婚の君には心配のない話しだと思うけどな。

女っていうのはわがままな生き物だ。はいはい。分かったふりさえしておけば、問題事は起こらないさ。

まあ…

夫婦歴の長い先輩からのアドバイスだと思って頭の隅にでもおいてくれ。」


「…ありがとうございます。」


軽く頭を下げて部屋を出た。


腕時計を確認すると20時を丁度さした頃だった。


彼女は帰宅しているのだろうか…。


そんな事を気にするのは夕飯の心配のためだ。


遠藤さんのアドバイスもアテにならない。


だって彼女は一度もわがままなど言ったことがないのだから。

女がわがままであるのは

きっと

遠藤さんの奥さんに限っての話しに違いない。


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