恋に落ちるなら君がいい


静かなリビングに時計の音だけが響く。

何をする気にもなれないのに

彼女の部屋の扉が気になって仕方が無い。



パジャマに着替えて薬を飲んで寝ろ。と言いたいのに言えないもどかしさからだろう…。


仕事のことやライフプランを考えてる時は時間なんてあっという間に過ぎるのに…


「1分ってこんなに長いものなんだな…」

腹の奥から深いため息が自然とこぼれる。

今まで生きてきた人生の中でも今日は一位二位を争うくらいため息をついている気がする。


やはり、様子でも見に行くか…。



そう思い、彼女の部屋の扉のノブに手をかけた時


勝手に扉が開いて

足をもつらせた彼女が俺の胸の中に飛び込んで来た。



服を着ていても伝わる彼女の温度と重み

一瞬、鼓動が跳ねるような感覚と少しの眩暈。


「す、すいません。」

慌てて体を離した彼女に返事もできずに

飲み物を取りに行ったその背中を目で追ってしまった。



温かかった…。

温かすぎて…

恐かった。


まだ、心臓が跳ねるような音をたてている。



小さくて華奢で

それなのに柔らかくて…

自分との体の違いに驚いた。



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