恋に落ちるなら君がいい
「楓…社長?」
視界に見える彼の後頭部に声をかけると数秒の沈黙のあとに
彼が眠たげな目をこすりながら振り向いた。
「君…風邪をひいているんだろ?会社には連絡をしてあるのかい?」
「いえ…出勤する予定です。」
すると彼は、微かに眉間に皺を寄せ私を見つめた。
「そんな状態で出勤された側のほうが迷惑だろう…。
君はすぐに病院で薬を貰って療養しているといいよ。
俺は会社に行くけれど、暇ができれば顔をだすから。分かったね?」
まさか
そんな事を言われるなんて思ってもいなかったから…少し拍子抜けをした。
彼のことだから、私の事を本気で心配しているわけではないだろうけど
それでも意外だった。
小さく頷いて「行ってらっしゃい」と言うと
私が納得したことを理解したらしく、ようやく柔らかい顔つきになった。