恋に落ちるなら君がいい

「もしも慧が今…幸せだったら？


それなら…


私は嬉しいよ…？」


それが自分の本音なのかも分からずに答えると


野嶋君は少しだけ怒った口調で話し始める。


「あんな思いをしたのに？」


あんな思い…。



脳裏に蘇りそうになる記憶を、なんとかかき消そうと声を振り絞った。



「もう止めよ？もう…この話しは止めようよ。


もう


居ない人の話しをしたってどうしようもない…」



「それはそうだけど…


でも…」


「でも…なに？」


「俺は橘なら俺の気持ちを理解してくれると思ってるし…


俺も理解できる。」


「…傷を舐め合っても…


どうしようもないよ…？」



2人の間に嫌な沈黙が訪れた時

私の携帯に知らない番号からの着信が入った。



不思議に思い首を傾げると、野嶋君に「でてみたら？」と言われて


恐る恐る通話ボタンを押すと意外な人物の声が耳元から聞こえて

目が点になった。


正直

今の今まで目が点になる意味が分からなかったけれど

この言葉がこういう時に使われるんだろうと今、初めて知った。