恋に落ちるなら君がいい
「なら、あなたには…いるんですか?」
「俺はいないよ。でも、君はいるんだろ?」
その言い方は何か確信を持っているような、違うような
迷いのある聞き方だった。
「言わなきゃ…ダメですか?」
「聞いてみたかっただけだ。でも、そんな風に言うって事はいるんだろ?」
呆れたような口調で、ため息をついてみせる彼に
私は戸惑っていた。
今現在好きな人…
それは
私にとって慧なのかもしれない。
何年も生きているのか死んでいるのかも分からない慧を想って生きてきて
慧しか見えなくて
それだけだった。
結婚したのは
もしもいつか
慧と会えたら…
私を傷つけたと後悔する慧に安心を与えたかったからだ…。
ちゃんと幸せだよって。