恋に落ちるなら君がいい
たまたま時間のあった土曜の夜
そんなきっかけで、2人で外に出た。
思えば…
プライベートで一緒に歩いた女性は彼女が初めてだ。
彼女は…
どうなんだろう?
「楓社長?…私の顔に何かついてます?」
「えっ?あ…いや、なんでもない。」
自分でも気づかないうちに、見ていてしまったらしい。
気づくと恥ずかしいもので、パッと視線を逸らすと
彼女は小さく鼻歌を歌いだした。
何の曲かは分からないが
とても優しいメロディー。
「失礼なことを言うが…君はもっと無機質な人間だと勝手に思っていた。」
すると彼女は優しく笑い、首を横にふった。
「自分でもよく分かりません。
自分が空っぽな人間なのか…
普通なのか。
でも最近、古い友人と会って
たくさんの事を思い出していくうちに…
自分の中で何かが違ってきちゃったんです。」
優しい笑顔のはすなのに
どこか愁いをおびたその表情を見ると
胸がキュッと締め付けられるような気分になる。