恋に落ちるなら君がいい
幸せと呆れの混じったため息が小さく溢れる。
私からしてみたら
今の人達は結婚願望がなさ過ぎのように見えるのよね。
もっともっと幸せになりたいって欲張っちゃっても罰は当たらないはずなのに…。
「えー…じゃあ、朝礼を始める。」
課長が私をちらちら見ながら、いつものようにほぼ、愚痴か説教が9割を占める朝礼を始めた途端
ドアの外の騒がしさに
みんながドアのほうに視線をやった。
瞬間
キィっとゆっくりと
静かに開いた広告部の扉。
綺麗な革靴が顔を出したそこにいたのは
水無月 楓28歳
我が社の社長だった。
「しゃっ、社長っ⁉」
課長あたふたと頭を下げ、社長のもとへと小走りに行く。