恋に落ちるなら君がいい



そんな話しをしている間にお店のドアが開いた気配を感じ

楓社長が出迎えるために立ち上がったから


私も慌ててその背中に付いて行く。


緊張した手が汗ばむけれど、緊張を表に出してしまっては楓社長に恥をかかせてしまう。


私は俯きながら彼の背中について行き

彼が立ち止まると、私も立ち止まる。


まるでマネっこだ。


「楓さん、ステキな店に招待してくれてありがとうございます。」

「いや、気に入ってくれたなら良かった。

先に紹介するよ。

家内の澪だ。」

その言葉の合図で、ゆっくり、上品な笑顔を作りながら顔をあげた。


瞬間

目と目があった

2人が

言葉を失った。



慧が…


もう二度と会えないと思っていた


慧が


私の前にいた。




お互い、目を見開き

時間が止まったかのように見つめあっていた。


言葉なんて出てこなかった。


なんで…

慧が…?




< 85 / 308 >

この作品をシェア

pagetop