恋に落ちるなら君がいい
そんな話しをしている間にお店のドアが開いた気配を感じ
楓社長が出迎えるために立ち上がったから
私も慌ててその背中に付いて行く。
緊張した手が汗ばむけれど、緊張を表に出してしまっては楓社長に恥をかかせてしまう。
私は俯きながら彼の背中について行き
彼が立ち止まると、私も立ち止まる。
まるでマネっこだ。
「楓さん、ステキな店に招待してくれてありがとうございます。」
「いや、気に入ってくれたなら良かった。
先に紹介するよ。
家内の澪だ。」
その言葉の合図で、ゆっくり、上品な笑顔を作りながら顔をあげた。
瞬間
目と目があった
2人が
言葉を失った。
慧が…
もう二度と会えないと思っていた
慧が
私の前にいた。
お互い、目を見開き
時間が止まったかのように見つめあっていた。
言葉なんて出てこなかった。
なんで…
慧が…?