恋に落ちるなら君がいい
「2人とも…どうした?」
私達の様子がおかしいことに気づいたのか、楓社長の言葉に我にかえり、慌てて挨拶をする。
「主人がいつもお世話になっています。
家内の澪と申します。」
挨拶が正しかったのかも分からない。
頭をさげて
真っ白な頭の中を生理しようとしたって思考がとまっている。
鼓動だけが
今にも飛び出しそうなほどの大きな音をたてて
痛むような胸の苦しさを感じる。
「…福富…慧一と申します。隣にいるのが家内の砂月です。」
慧が…
結婚をしている。
壊れそうなほど打ち付ける鼓動を抱えたまま顔をあげると
慧の隣には
スラリと背の高いモデルの様な体型の綺麗な女性が立っていた。
「立ち話もなんだから…座るか?」
楓社長の提案で私達は席についたけれど
向かいの席に座る慧を
直視できない。
緊張?
恐怖?
切なさ?
愛おしさ?
どの感情も当てはまらないようであてはまるような
自分でもわからなくて…
込み上げてきそうな涙を我慢することだけで精一杯だった。