恋に落ちるなら君がいい
こんなはずじゃないのに
「慧一さん、ここのお料理とても美味しいわね」
「…うん。今度また来ようか」
目の前で繰り広げられる2人の会話が無数の針のように突き刺さって
呼吸の仕方が分からなくなる。
それでも私と同じで殆ど手をつけられずにいる慧のお皿をみると
なぜだか少しばかりの安心感を覚えてしまう。
「澪さんは…大人しい方ね。お人形さんのように可愛らしくて
ステキな奥様ですね。」
砂月さんの言葉に、一瞬、肩が震える。
「緊張してるだけですよ。慣れればお喋りになります。」と楓社長が冗談を言って笑っても
引きつった笑顔を浮かべるので精一杯だった。
「俺も…緊張してるから。
同じですよ」
慧の言葉に
耳が反応して
熱くなる。
慧はそう。
いつだってさり気なく優しく私をフォローしてくれる。
でも
今は…