強い女
店長はフロアでは絶対説教しない

「お客様への配慮」
できているつもりだったそんな根本的なことを、
店の運営面もだめ押しに添えて説教されるなんて…
屈辱と悔しさに涙がにじむ
思わずフロアの一歩手前で立ち止まった

…今日は良い日だったのになぁ…

どんなに悔しくても人前で泣くのは恥だ。
私は強いんだから…私は強い…私は強い…

自分に言い聞かせながら深呼吸する
感情が静まるのを待って、
一歩踏み出した

決して折れまいと伸びる背中と、
張り詰めた糸のような真っすぐな目を副店長の山本がそっと見守っていた




「そろそろ折れ時だと思うんだけど…」

山本はため息をついて鉄板に油を塗った
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