セピア‐ため息の行方

プロローグ

　　木の実ってりんごにしろみかんにしろ、お尻を下にして実をつけるものなのだが花梨と言う果物は横に向いていたり、上に向いていたりしている。そんな普通っぽくないところがこの果物の魅力でもある。そんな花梨の実と同じ名前を持つのが倉橋花梨（くらはし かりん）。只今２６歳である。


　　ちなみに花梨は雑誌の締め切りに追われ時には日曜・祝日も返上して、しかも毎日残業を強いられる事があると言うそんな苛酷な職場である某出版社の編集の仕事をしている。


　　普通この年になると回りの友達は次々と結婚をして行く。巷では結婚をしていない女は負け犬だと言う風調が罷（まか）り通っているようだ。だが花梨は思う。果たして本当に結婚をしていないからと言って負け犬と言えるのだろうか？と。


　　要するに結婚をしていなくってもその人がやりたい分野を究めて、それぞれに結果を出して暮らしている女の人は、ただそれだけでキラキラと輝いて見えていると思う。だから一概に結婚をしていない女が負け犬だと言う俗説は当てはまらないとも思うのだ。