セピア‐ため息の行方
  そして花梨は転校と言う形で都内の都立高校に転入し、そしてその高校を卒業後は東京の短大へと進んだ。それから早いもので既に8年もの歳月が流れた。まさに光陰矢の如しである。それからはお互いに日々の忙しさに紛れてしまい、高校を卒業して以来は滅多に会える機会もなくなっていた。


  せいぜい年に一度会えれば良い方なのだった。なので最近ではもっぱらお互いにケータイかパソコンのメールで時々近況報告をし合うくらいであった。 ちなみに松本胡桃は高校を卒業してそのまま地元の大学へと進んだ。だが胡桃は大学卒業の約1年前にその当時つき合っていた彼氏とバースコントロールの失敗により子供が出来てしまい、その時胡桃は出来ちゃった婚をした。胡桃が調度21歳の時の事である。


  その時大学はあと1年余りで卒業と言う時期だったので、両親の強(た)っての希望で、子育てをしながら親元から大学に通い必ず大学を卒業すると言う親との取り決めがなされた。なので大学を卒業するまでは実家で住みながら、親に全面的に庇護をして貰って大学に通い、しかも旦那さんが学生時代から一人暮らしをしているアパートで、旦那さんの身の回りのお世話をし、家事全般までこなすと言う所謂(いわゆる)通い婚みたいな形を取り、それを大学卒業するまで続けた。


  そしてその間にお腹の目立たない時期を選んで身内だけで簡単な結婚式も挙げた。その時には親友の花梨と数人の友達が結婚式の後の飲み会を企画してくれて、胡桃の結婚を心から祝福してくれた。その後は家庭に入ってしまっていた胡桃だったが、子供が出来やすい体質だったのか次々に年子で3人も子供が出来てしまったのだ。そのために胡桃は若い頃から遊ぶ暇もなしに毎日子育てと家事に追われる忙しい日々を過ごしていた。だがそれなりに我が子は可愛いので育児も充分に楽しんでいた。
< 128 / 291 >

この作品をシェア

pagetop