セピア‐ため息の行方
  その電話連絡があったのは丁度胡桃が保育園に3人の子供達を送りに行って一息を付いていた時だった。突然リビングの電話がけたたましく鳴り響いた。が、しかし暫し心が緩んでいた時だったので胡桃はその電話の音に思いの他ビクリと反応した。


  胡桃が受話器を取ってすぐに
「はい松本です」
  と言うと


「あっ胡桃ちゃんご無沙汰をしております。お元気でしたか?私倉橋です。実は今朝早く花梨が交通事故に遭(あ)ってしまって、今意識不明なの」
  と親友の母親である有莉禾が言った。


  心なしか涙声である。胡桃はびっくりした。幼馴染で親友の花梨が交通事故で意識不明?それを聞いた瞬間もう頭の中が真っ白になった。
「お・おばちゃん。花梨が交通事故に遭(あ)ったって本当ですか?それで容態はどうなのですか?」
 と聞いた。


  すると
「それが今集中治療室を出て一般病棟に移っているのだけれど、意識がない状態でね。何とも言えないの。取り敢(あ)えずは親友の胡桃ちゃんにはお知らせをしておこうと思ってね。連絡をして見たの」
< 129 / 291 >

この作品をシェア

pagetop