セピア‐ため息の行方
  その言葉を聞いて胡桃は安堵の胸を撫で下ろした。だが胡桃は感が極まっているせいか尚も
「花梨解る?私胡桃よ。早く目を覚ましてまたあのやさしい笑顔を私に見せてね」
  と叫んだ。そして自然に再び胡桃の目からは大粒の涙がボロボロと零(こぼ)れ落ちてきた。どうやら胡桃の涙腺は完璧に壊れてしまったようだ。なので胡桃は零(こぼ)れ落ちるその涙をハンカチで何度も何度も拭った。


  すると唐突に有莉禾が言った。
「もう少しで面会時間が終わるの。ちなみに胡桃ちゃんお宿は予約してあるの?」
  と言った。


「はい。この病院の近くのホテルを予約してあります」
  と答えた。
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