セピア‐ため息の行方
「でもやはり秋田の空とは雲泥の差ですよ。都会ではやはり輝くような満天の星空は望めませんからね」
  と啓太は半ば秋田の故郷を懐かしむ表情で言った。


「そうね。それはそうなのかも知れない」
  と胡桃は納得をして頷(うなず)いた。


  暫く歩くと駅に着いたので
「あっ啓太君此処なの」
  と言って胡桃はハンドバックの中からコインロッカーの鍵を取り出すと、やや大きめの縦長のコインロッカーの傍に寄り、鍵穴に鍵を差し込んで、扉をそっと開けて中から茶色い旅行鞄を取り出した。すると啓太は透かさずその旅行鞄を胡桃の手から受け取り、そのやや大きめの茶色い旅行鞄を持ってくれた。


「啓太君ありがとう」
  と胡桃は言って


「ホテルはこのビルの上なの」
  と高い瀟洒(しょうしゃ)なビルを指差した。
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